小さなお子さんを育てている世代にとって、「自分に万一のことがあったら」という話は できれば考えたくないテーマかもしれません。ですが、お子さんがまだ幼いうちに 親に万一のことがあると、遺されたご家族が直面する問題は、高齢の方の相続とは 異なる種類のものになります。ここでは、子育て世代のうちに知っておきたい備えの 基本を、落ち着いて整理していきます。

生命保険の受取人指定を確認する

生命保険の死亡保険金は、契約上「相続財産」そのものではなく、指定された受取人固有の 財産として扱われるのが原則です。つまり、遺産分割協議を経なくても、指定された受取人が 直接受け取ることができます。だからこそ、受取人の指定が実情に合っているかどうかは 重要です。結婚・出産・離婚などライフステージが変わったタイミングで、受取人の指定を 見直していない、というケースは意外と多く見られます。

なお、死亡保険金は相続税の計算においては「みなし相続財産」として課税対象に含まれる 場合があります。保険金に関する税金の扱いは制度がやや複雑なため、詳しくは相続税を 扱う別の記事や、税理士への相談を通じてご確認ください。

お子さんが未成年の場合の「親権」と「未成年後見人」

両親のうち一方が亡くなった場合、通常はもう一方の親が親権者として引き続きお子さんを 育てることになります。問題になりやすいのは、ひとり親家庭で親権者が亡くなった場合や、 両親がそろって亡くなった場合です。この場合、お子さんが成人するまでの間、 身の回りの世話や財産管理を行う「未成年後見人」を選任する必要があります。

未成年後見人は、あらかじめ遺言書で指定しておくことができます(指定未成年後見人)。 指定がない場合は、家庭裁判所に申立てを行い、家庭裁判所が後見人を選任する手続き (選定未成年後見人)が必要になり、選任までに一定の時間がかかります。お子さんが まだ小さいご家庭にとって、遺言書は「財産を誰にどう分けるか」だけでなく、 「お子さんの今後を誰に託すか」を伝える手段にもなるという点は、あまり知られていません。

遺言書を残しておく意味は高齢者だけのものではない

遺言書というと、高齢の方が老後に向けて準備するものというイメージがあるかもしれません。 しかし、子育て世代にとっても遺言書には意味があります。たとえば、亡くなった方に 子どもがいない場合は配偶者以外の親族(親や兄弟姉妹)も相続人になりますが、 子どもがいる場合は基本的に配偶者と子だけが相続人になります。とはいえ、 未成年のお子さんが相続人になると、遺産分割協議には特別代理人の選任が必要になるなど、 通常の相続よりも手続きが煩雑になりがちです。あらかじめ遺言書で分け方の方針を 示しておくことで、遺されたご家族の負担を減らせる場合があります。

万一のときのために今から整理しておきたいこと

特別な準備をいきなり整える必要はありません。まずは、次のような点を家族間で 共有しておくことから始めるとよいでしょう。

  • 加入している生命保険の内容と、受取人が実情に合っているかどうか
  • 預貯金口座や証券口座、ネット銀行など、どこにどのような財産があるか
  • お子さんの後見人について、希望する人がいればあらかじめ話し合っておくこと
  • 住宅ローンを組んでいる場合、団体信用生命保険(団信)の加入状況

これらは、エンディングノートのような形式に書き残しておくと、いざというときに 家族が探し回らずに済みます。特別な事情がなくても、子育て世代のうちから 少しずつ整理しておくことをおすすめします。

まとめ

子育て世代にとっての「万一への備え」は、財産をどう分けるかということ以上に、 お子さんの今後を誰がどう支えるかという視点が欠かせません。生命保険の受取人指定、 未成年後見人の指定、遺言書の作成は、それぞれ役割が異なるため、ご家庭の状況に 応じてどれが必要かを考えることが大切です。具体的な遺言書の作成や後見人の指定に ついては、専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

ご利用にあたって

本記事は、相続に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務相談・ 法律相談に代わるものではありません。実際の手続きや保険・税金の扱いは 個々の状況によって大きく異なります。具体的なご判断の前には、必ず税理士・弁護士 などの専門家にご相談ください。

記事内の制度に関する記述は執筆時点の情報に基づきます。制度は改正されることが あるため、最新の内容は国税庁など公的機関の発表または専門家にご確認ください。