相続が発生すると、「税理士に相談した方がよいのだろうか」「相談するとしたら、どんな税理士を 選べばよいのだろうか」と迷う方は少なくありません。税理士にはそれぞれ得意分野があり、 相続税はその中でも専門性が問われる分野のひとつだといわれています。この記事では、 相続税に強い税理士を選ぶ際に知っておきたい基本の考え方と、確認しておきたいポイントを まとめました。
そもそも相続で税理士が必要になるのはどんなときか
相続が発生したからといって、必ず税理士への相談が必要になるわけではありません。 相続税には「基礎控除」という、税金がかからない金額の枠があり、相続財産の総額が この枠に収まっていれば、相続税の申告自体が不要になる場合が多くあります。 基礎控除の具体的な金額や計算方法は年度によって変わり得るため、ここでは目安の 考え方のみをご紹介します。詳しい金額は国税庁の発表または税理士にご確認ください。
一般的に、次のようなケースでは、財産の総額が基礎控除の枠を超えて相続税の申告が 必要になりやすいといわれています。
- 自宅の土地・建物に加えて、預貯金や有価証券もまとまった額がある
- 複数の不動産(実家以外の土地・賃貸物件など)を所有している
- 自営業・会社経営をしており、事業用の資産がある
- 生命保険金や死亡退職金など、相続税の計算上「みなし相続財産」とされるものがある
また、相続税の申告が必要かどうかぎりぎりの財産規模であっても、土地の評価の仕方や 各種の特例(小規模宅地等の特例など)の適用によって、申告した方が有利になる場合と 不要になる場合が分かれることがあります。この判断は財産の内容によって大きく異なるため、 「うちは関係ないはず」と自己判断する前に、一度税理士に確認しておくと安心です。
相続税に強い税理士と、そうでない税理士がいる理由
「税理士」という資格はひとつですが、実際の業務内容は税理士ごとに大きく異なります。 多くの税理士は、法人の顧問(法人税・消費税の申告)や個人の確定申告(所得税)を 主な業務としており、相続税の申告を扱う機会が少ない、あるいはほとんど扱わないという 税理士も珍しくありません。
相続税の申告は、法人税や所得税の申告と違って毎年発生するものではなく、 土地の評価や特例の適用など、他の税目にはない専門的な知識が必要とされる場面が 多くあります。同じ税理士資格を持っていても、相続税の申告実績が豊富な税理士と、 数年に一度しか扱わない税理士とでは、対応できる範囲や提案の幅に差が出ることが あるといわれています。相続税に関する相談先を探す際は、この「税理士ごとの得意分野の違い」を 念頭に置いておくとよいでしょう。
相続税に強い税理士を選ぶときに確認したいポイント
相続税の相談先を検討する際に、確認しておくとよいとされる代表的なポイントを まとめました。あくまで一般的な目安であり、最終的な判断は個々の状況に応じて 行っていただくことになります。
相続税の申告実績
相続税の申告を年間どれくらいの件数扱っているかは、専門性を見る目安のひとつに なります。相続税専門を掲げている税理士事務所や、相続税の申告実績を具体的な件数で 公開している事務所もあります。
書面添付制度への対応
税理士が申告内容の計算過程や根拠を記載した書面を添付して申告する「書面添付制度」 という制度があります。この制度を活用している税理士は、税務調査の対象になった場合に 先に税理士への意見聴取が行われる(結果として調査そのものが省略される場合がある) などの取り扱いを受けられることがあり、申告内容に対する説明責任を果たす姿勢の ひとつの表れとされています。対応しているかどうかを確認してみるとよいでしょう。
料金体系の分かりやすさ
相続税申告の報酬は、財産の総額や内容の複雑さによって大きく変わります。 契約前の時点で、見積もりの根拠(財産総額に応じた基本報酬か、追加でかかる可能性が ある費用は何か)を分かりやすく説明してくれるかどうかは、依頼後のトラブルを 避ける上で重要な確認ポイントです。
土地の評価や二次相続を見据えた提案があるか
相続財産に土地が含まれる場合、評価の仕方によって相続税額が変わることがあります。 形状が複雑な土地や、貸している土地・借りている土地なども、評価の考え方によって 結果が異なり得るため、土地の評価に慣れている税理士かどうかは確認しておきたい点です。
また、たとえば父母のどちらかが亡くなった際の相続(一次相続)だけでなく、 その後もう一方の親が亡くなった際の相続(二次相続)まで見据えた分割方法の提案が できるかどうかも、税額全体に影響することがあるポイントとして挙げられます。
| 確認したいポイント | 見るとよい点の例 |
|---|---|
| 相続税の申告実績 | 年間の申告件数、相続税専門を掲げているかどうか |
| 書面添付制度への対応 | 制度を活用しているか、対応の説明が明確か |
| 料金体系 | 見積もりの根拠、追加費用が発生する条件の説明 |
| 土地の評価 | 評価が難しい土地(形状が複雑・貸借がある等)への対応実績 |
| 二次相続への視野 | 一次相続だけでなく、その先まで見据えた提案の有無 |
相談前に準備しておくとよいもの
相談をスムーズに進めるために、あらかじめ手元に用意しておくとよいとされる資料の 例を挙げます。すべてがそろっていなくても相談自体は可能ですが、財産の全体像が 分かる資料があるほど、より具体的な話がしやすくなります。
- 預貯金の通帳、残高が分かるもの
- 不動産の固定資産税の納税通知書・登記事項証明書など
- 株式・投資信託などの残高証明書
- 生命保険の保険証券
- 被相続人と相続人の関係が分かる資料(戸籍謄本など)
- 借入金がある場合はその内容が分かる資料
- 過去に生前贈与を受けたことがあれば、その記録
相談するタイミング|早めに動いた方がよい理由
相続税の申告と納付には、「相続の開始を知った時の翌日から10か月以内」という 目安の期限があります。10か月というと余裕があるように感じられるかもしれませんが、 実際には次のような理由から、早めに動き始めた方がよいといわれています。
- 財産の調査(不動産の評価、預貯金や有価証券の確認など)自体に一定の時間がかかる
- 相続人全員での遺産分割協議がまとまらないと、一部の特例が使えない場合がある
- 土地の評価や特例の適用の検討には、資料の収集や現地確認など時間を要する作業が含まれる
- 期限の直前に依頼が集中する時期は、税理士側の対応にも余裕がなくなりやすい
上記の期限は執筆時点の制度に基づく目安です。実際の起算点や日数の数え方には 例外もあるため、最新の内容は国税庁または税理士にご確認ください。
まとめ
相続税の申告が必要かどうかは財産の総額によって決まり、必要な場合でも、 どの税理士に依頼するかによって、対応の幅や提案の質に差が出ることがあります。 申告実績、書面添付制度への対応、料金体系の分かりやすさ、土地の評価や二次相続への 視野といった点を確認しながら、ご自身の状況に合った相談先を探してみてください。
この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個々の財産状況に対する 具体的な判断は行っておりません。相続税がかかるかどうか、どの程度の税額に なりそうかといった具体的な内容については、税理士にご相談いただくことを おすすめします。
ご利用にあたって
本記事は、相続税の相談先を検討する際の一般的な考え方を紹介したものであり、 個別の税務相談に代わるものではありません。実際に相続税の申告が必要かどうか、 どのような対応が適切かは、財産の内容や相続人の状況によって大きく異なります。 具体的なご判断の前には、必ず税理士にご相談ください。
記事内の制度・期限(基礎控除、申告期限など)は執筆時点の情報に基づく目安です。 相続税に関する制度は改正されることがあるため、最新の内容は国税庁など 公的機関の発表または税理士にご確認ください。